最終更新日:2026.07.23

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高齢の親や配偶者がご飯を食べなくなると、「体調が悪いのでは」「このまま痩せてしまわないか」と心配になる方も多いでしょう。高齢者の食欲低下は、さまざまな要因が複合的に重なって起こります。まずは原因を正しく把握し、適切な対処につなげることが大切です。今回は、高齢者がご飯を食べない原因と家庭でできる対処法、受診の目安となるサインについて詳しく解説します。

高齢者がご飯を食べなくなる主な原因

高齢者の食欲低下は、一つの原因によるものとは限りません。加齢による身体機能の変化や疾患・薬の副作用・精神的な要因が複合的に絡み合っていることが多く、まずは「食べなくなる」ときの主な原因を見ていきましょう。

加齢による消化・嚥下機能の低下

加齢に伴い、食べ物を飲み込む力(嚥下機能)が低下すると、1回の食事でとれる量が少なくなる場合があります。

また、胃腸の機能が衰えると消化不良を起こしやすくなり、食後すぐに満腹感を覚えて食事量が減りがちになります。高カロリーな食べ物が食べられなくなるケースも見られ、これらが重なることで栄養が不足しやすくなります。

味覚・嗅覚の衰え

加齢とともに味覚や嗅覚が鈍くなると、食べ物の風味を感じにくくなり、食事そのものの楽しみが薄れていきます。

特に甘みや塩味が分かりにくくなることが多く、普段の食事が物足りなく感じられることがあります。このような加齢による機能的な変化は、食欲低下の一因となる場合があります。

疾患(器質的疾患)の影響

胃がんや膵がんなどの悪性疾患、あるいは胃・十二指腸潰瘍・慢性膵炎・肝硬変といった良性疾患があると、消化吸収の働きの低下や体調不良によって、食欲が落ちることがあります。高齢者の場合、内臓の知覚が衰えて腹痛などの自覚症状が出にくく、かなり進行した状態で発見されることも少なくないため、注意が必要です。

また、脳梗塞や脳出血といった脳血管障害、パーキンソン病などの神経・筋疾患が原因で摂食・嚥下に障害が生じ、食べられなくなるケースもあります。

筋肉の減少

加齢による体力の低下は運動不足を招き、消費エネルギーが減るため、食欲が落ちやすくなります。これを放置すると、加齢による筋肉量・筋力の低下(以降、サルコペニア)を合併しやすく、歩行困難や転倒・骨折、さらには認知症につながることもあります。

薬の副作用

高齢者は薬物の代謝・排泄能が低下しているため、常用量であっても薬効が強く現れやすい状況にあります。睡眠導入剤・抗不安薬・抗精神病薬・降圧薬などは食欲不振の原因となりえます。

また、抗コリン剤・三環系抗うつ剤・Ca拮抗薬なども嚥下機能を低下させることがあり、薬との関連が疑われる場合は医師や薬剤師への相談が重要です。

精神的要因(うつ・孤独感)

高齢者のうつ病は、配偶者との死別や家庭内のトラブルといったライフイベントをきっかけに引き起こされやすく、食欲や意欲の低下につながります。外出できず人と話す機会が減ると、憂うつな気分になり、食事が進まなくなることもあります。

孤独感や孤食が続くと食事の楽しみそのものが失われ、低栄養状態に陥るリスクが高まります。精神面のケアも食欲維持には欠かせない要素です。

高齢者の食欲低下を改善するための工夫・対処法

食欲低下の原因を特定した上で、日常生活の中でできる工夫を組み合わせることが改善の鍵となります。食事内容の見直しや口腔ケア・運動・社会参加など、多角的なアプローチを取り入れましょう。

食事内容・盛り付けの工夫

食欲が落ちているときは、一度に大量の食事を出すよりも少量ずつ小分けにするほうが食べやすくなります。本人の好みの食べ物を中心に献立を考え、咀嚼・嚥下が弱まっている場合は、やわらかさやとろみを重視した調理にすることで食べやすさが増します。

旬の食材を取り入れて会話が弾む雰囲気をつくることも、食欲を引き出す工夫になります。総合栄養食品や栄養補助飲料の活用も、選択肢として検討してみましょう。

元気な介護グループでは、季節や行事に合わせたお食事メニューを提供しており、入居者の方が楽しみながら食事できるよう工夫を行っています。調理などの具体的な工夫は、「高齢者の食事ガイド|食べやすい食材・調理法は?よくある悩みも紹介」もご覧ください。

▼クリスマスでのお食事例

※献立は施設によって異なります。

口腔ケアと嚥下機能の維持

舌・唇・頬・喉の筋肉を鍛えるお口の予防体操(頬の体操・唇の体操など)を日常的に行うことで、口腔機能や嚥下機能の維持・向上が期待できます。食事の前に取り入れる習慣として始めてみましょう。唾液腺マッサージ(耳下腺・顎下腺・舌下腺)も口腔乾燥の予防に効果的です。

定期的に歯科を受診して口腔機能を評価してもらいながらケアを継続することが、食べる力の維持につながります。

適度な運動と規則正しい生活

体を動かすことで消化機能の働きがよくなり、栄養の吸収も改善されます。買い物・散歩・家事・テレビ体操など、日常的に適度に体を動かす習慣をつけることでストレス解消や血行改善の効果も期待できます。

外出が難しい場合は、訪問リハビリテーションを活用することも有効な選択肢の一つです。

孤食を防ぎ、共食の機会をつくる

孤食が続くと食事の楽しみや味わいへの感動が薄れ、低栄養につながりかねません。家族や介護者が一緒に食卓を囲むことで、食欲が自然と増す効果が期待できます。

地域活動やボランティア活動への参加は生きがいを生み、心身の健康維持にもつながります。活動量が増えることも、食欲改善に効果的とされています。

医療機関への相談

服用中の薬剤が食欲不振の原因となっている可能性がある場合は、早めに医師や薬剤師に相談することが重要です。

「少し食べる量が減ったかな」と感じた時点で受診すると良いでしょう。

【受診の目安】高齢者が食べない状態が続くときの注意サイン

食欲低下が続いているとき、どのタイミングで受診すれば良いか迷う方も多いでしょう。以下のようなサインが見られる場合は受診の目安となります。複数のサインが重なる場合や長期化する場合は、早めに医療機関への相談を検討してください。

急激な体重減少・衣服のゆるみ

「6か月間に2〜3kg減少」または「1〜6か月間の体重減少率が3%以上」は低栄養リスクの目安です。低栄養が進行してサルコペニアを合併すると、歩行困難や転倒・骨折のリスクが高まります。また、低栄養や身体機能の低下は認知機能の低下とも関連するとされています。

なお、BMI18.5kg/m²未満は一般的に「やせ」の目安ですが、高齢者ではBMIだけでなく体重減少や筋肉量も含めて総合的に評価されます。

以前より衣服が大きく感じられるようになったり、体重の急激な減少が見られたりした場合は、受診を検討しましょう。

以前好んで食べていたものを急に嫌がる・食の好みが大きく変わる

好物を急に嫌がるようになった場合、食欲不振が深刻化しているサインである可能性があります。食事の時間になると憂うつそうになる、「胃がもたれる」「少ししか食べていないのに満腹感がある」といった訴えが増えることもサインの一つです。こうした変化が数日以上続く場合は注意が必要です。

口の乾き・皮膚の乾燥(脱水のサイン)

食事量が減ると水分の摂取量も自然と減るため、脱水症状が現れることがあります。「口の中が乾いている」「皮膚が乾燥し弾力がない」「唾液にべたべた感がある」といったサインは、脱水と低栄養の両方に共通する注意すべき状態です。

高齢者は本人も周囲も気づかないまま脱水状態に陥る「かくれ脱水」が起こりやすく、重症化すると命にかかわる場合があります。

気力の低下・外出意欲の喪失(うつ・アパシーのサイン)

気力が湧きづらく、外出する意欲が低下している場合、うつ病やアパシー(無気力・無関心を特徴とする状態で、認知症の症状の一つ)のサインである可能性があります。

食欲も低下するほか、食事の準備が億劫になる場合も多く、長期化すると身体に大きな負担をかけるおそれがあります。

腹痛がないのに食欲だけがない(内臓疾患が隠れているサイン)

高齢者は内臓の知覚が衰えているため、胃がんや膵がんなどの悪性疾患が進行していても腹痛などの症状が出にくいことがあります。

「腹痛などの症状がないからたいしたことはない」と放置せず、特に食欲低下が続く場合は早めに内科・消化器科を受診することを心がけましょう。早期発見が治療の選択肢を広げることにつながります。

在宅での対応が難しくなったら訪問介護・施設入居も検討しましょう

食欲低下が長引くと、体力・免疫力・認知機能の低下にもつながります。家庭内だけで食事や体調の管理を続けるのが難しくなったら、ひとりで抱え込まず、専門スタッフによるサポートも検討しましょう。

元気な介護グループでは、医療機関と連携した安心の体制や専門的な認知症ケアなど、ご本人の個性を尊重した多様なサービス・施設を展開しています。「まだ先のことだけど……」という段階でも、まずはお気軽にご相談ください。

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まとめ

高齢者がご飯を食べなくなる原因は、加齢による消化・嚥下機能の低下や味覚の衰え、疾患や薬の副作用、精神的な要因など多岐にわたります。まずは「なぜ食べないのか」を把握し、食事の工夫や口腔ケア・運動・医療機関への相談など、原因に合ったアプローチを組み合わせることが改善への近道です。

急激な体重減少や気力の低下といった受診サインが見られた場合は、早めに医療機関を受診しましょう。在宅での対応に限界を感じたときは、訪問介護などの在宅介護サービスや施設入居といった選択肢も視野に入れながら、専門家のサポートを上手に取り入れましょう。

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